涼
涼さん (9a87kacx)2024/9/29 01:42 (No.6441)削除なまえのないてちょう
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異能について知る為に、何度か身体で実験をした。
アーキビストは身体が欠損した場合、人と違って問題無く接続しやすい。
だから、人じゃない物と接続してしまって、代替が出来るのかとか、
コアが首より下にある時に首を切った場合に、再構築は何方を素として始まるのかとか。
自分の身体を食べられるのか。
自分のコアだけが残った時、どうなるのか。
身体に火を付けて、コアだけが残る様にした時、死んじゃったと思っていたけれど、気が付けば身体が完全に元に戻って目が覚めた。時間は…半年程経ってたと思う。
首を切り離した時、落ちながら残った身体が見えたのが最後に気が付いたら目が見えるようになっていて、目の前に切り捨てられた生首があって、時間が経っていたからそこそこにグロかった。脳が其方に残っていたなら、あの自分とこの自分は別の人なのだろうか。
自身の身体を食べた時、凄く不味かったし、移植された身体はすぐに再構築の流れで除去された。
死を想え。
おおよそ、何時死んでもおかしくないから、だからこそ素敵な生を得ろ、ってのが主な解釈。
俺は、生と死が近くにあって、その世界に存在していて、嫌なことがあって、悲しんで、美味しいものを食べて、下らないことで笑って、嫌なことを放っておいて、素敵なものに出会って、散らかして、片付けて、手伝って、助けて貰って、沢山覚えて、忘れて。
同じ速度で流れる時間も、同じ速度で動く星も。
この場所に居て。
誰かの為に生きても、自分だけの為に生きても。
逃げる事も、立ち向かう事も、守る事も。
それでいいんだろうな。
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「…ねぇ。」
小さな手帳を開く彼の肩を叩く。彼が驚いて落としたそれを拾い、懐に仕舞った後、意地悪な笑顔を作って言ってやる。
「盗み見は流石の俺も恥ずかしいよ〜?持ち主を知りたかったんだよね、ありがと。」
「日記みたいなものだよ。メモ書きと言うか、その時思ったことだとかを取り留めて置く為の。」
「だって、『なんのために生きてるのか』の答えは毎日違っていてもいいからね。」「損得とかは生きてる事には関係が無いことだとか、だからこそ、思っていたと違うって、沢山思っている事だとか。」
「大切な目に見えないものが、愛されてる事が、幸せが、本当は感じる事が出来るのに、どうしてそれを忘れてしまって、違うものばかり見てしまうのかとか。」
不思議そうな顔をする彼の顔を見つめる。わかんないよね。俺もわかんない。そして俺は懐から新しい白紙の手帳を取り出して彼に渡してあげる。
「今の俺じゃすぐに忘れちゃうからね。気が向いた時に、読み返して、思い出すんだよ。前の自分はこう思ってたんだって。君も、やってみてよ。そうしてこの手帳を落としたら、俺が拾って呼んであげる。」
手帳を受け取る彼は恥ずかしそうにする。自分の両頬が緩むのが嫌という程分かる。楽しみだな。きっと彼は素敵な言葉を取り留めるんだろうな。自分で読み返したら恥ずかしい文になるかも知らないけど、背伸びした様な言葉に思えるかもしれないけど。
それを読んだら、俺は、素敵だねって、沢山褒めてあげるんだ。